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2013年02月28日

【連載/沖縄エンタんちゅ】野村岳也(映画監督)<後編>

引き続き、野村岳也監督に、『ふじ学徒隊』をはじめ、『イザイホウ』などの製作秘話をうかがった。

 


いまこそ話をしてくれて映像に残せてよかった
――学徒隊の証言の、つらいおはなしを掘り起こす作業でした。
野村:インタビューはひじょうに難しかったです。

最初我々も脚本というか、ある程度シナリオをつくったんです。想像で、“かくあろうか”っていうシナリオをつくった。それにあわせようとして、インタビューしたわけですよ。
ところが、向こうの話したいことと、我々がほしいものとギャップがあった、だからなかなかうまく撮れない。それで何回もやり直した。

何回やっても、嫌な顔しないでね、出てくれるんですよ。そこで、いままでつくった脚本は捨てて、みんな好きなようにしゃべっていただいてね、それで再構成するようなかたちでつくった。
ですから、はじめの意図する脚本とはぜんぜん違うんですよ。

――学徒隊のみなさんも、よくお話しいただけましたね。
野村:彼女たちももう85歳でしょ。もうそろそろね、いま話さないと話せないという切羽詰まったところにきているんですよ。だからそういう意味で、話をされたんだと思います。
もう10年前だったら、もっといい話が撮れるのになんて話がありましたけどね、そうじゃないんですよ。
いま切羽詰まってはじめてね、その中に真実がでてくるんですね。そういう意味ではいま撮ってよかったとぼくは思います。

――学徒隊のみなさまご自身が、できあがった作品を観ることができて、届いたというのはうれしいですね。
野村:みなさんに喜んでもらえてよかったです。
最初は、かなりフィクションに近いようなドキュメンタリーだったんですよ。
ドキュメンタリー映画というのは幅が広いんです。一方ではニュース映画があるでしょ、一方ではドラマがある。その間がある。これは10%ぐらいですね、両方とも。それで80%ぐらいがドキュメンタリーなんです。ところが、ドキュメンタリーで、ドラマに近いドキュメンタリーもあれば、ニュースに近いドキュメンタリーもある、ドキュメンタリーというのは幅が広いですね。

なかなか言える言葉じゃない「絶対に死んではならない」
――ふじ学徒隊については、沖縄でも知らない方がいるようですね。
野村:そうですね。どこの学徒隊もみんな半分くらい亡くなられてますよね。ふじ学徒隊だけですね、3名しか死ななかったのは。これはどうしてそうなんだろう、というところから、ぼくたちも入っているんですね。
隊長さんも武士ですよね。部隊にいる人たちみんな真剣に命に向き合ったなかで、彼女たちだけは助けたいとなってきたと思うんですね。

最後は自決されますが、普通はまずモルヒネで眠らせてから青酸カリを飲むんです。一種の安楽死ですね。彼は副官がそばにいたからそういうこともできたんですが、自分で飲んだ。一番つらい方法です。たいへんな人ですよね。

命に真剣に向き合ってきた人たちの中で、彼女たちが生かされた。

戦後でてきてからも、最初は生き延びたということが後ろめたくてなにも話したくはなかったそうです。
それがだんだんね、なぜ生かされたのか、生かされているのかという意味を考えたり、隊長の言葉がよみがえったりしながら、そんな葛藤のなかで、いかに生くべきかみたいな考え方でね、ずっとこうやって、“命ドゥ宝”ですよね、命ということをだんだん実感してくるわけですね。それからですよ、彼女たちが話しだすのは。その67年間の彼女たちのこころの軌跡が、本当は、いちばんドラマチックなんですよ。
――それがセーラー服姿の少女たちが草原を駆けるラストシーンにつながるんですね。
野村:あれは果たせなかった夢ですからね。もし戦争がなければ、こうあったであろうという夢ですよね。
――あのシーンがとても美しいだけに、その対比に胸を突かれます。美しいし、ちょっと救われるし、すこしかなしいし、という落差ですよね。
野村:あれがない方がいいっていう人もいます。それぞれですからね。観る人それぞれの作品になればいいと思っています。

――きれいな青空でした。

野村:ちょうどきれいに晴れたんですよ。直前まで雨が降ったり曇ったり、全然晴れなかったんです。もうあきらめたときに晴れて、本物の青空が撮れました。CGにしようかと言っていたんです。

――緑と青とコントラストが美しくて、奥のテーマが伝わりやすいと感じました。つらい証言だが、それだけではない、という。インタビューも洞窟で行われていて、そのまま横で聞いているようでした。つらい証言を淡々と話されていました。

野村:普通では考えられないことを話されてますね。奥にある想いも伝わりますね。
――小池隊長の「必ず生きて親元に帰れ。絶対に死んではならない。」という言葉は、監督ご自身はどのように受けとめられましたか。
野村:あの当時としてはなかなか言える言葉じゃないですよね。その発言をしているときはすべて腹をくくっているわけですから、本当の想いを言ったと思うんですね。

「映画が後輩だ」と学徒隊
――製作時に印象に残ったことを教えてください。
野村:一番大変だったのは、インタビューですね。あのときは思うようにいかなかった。あれがすんなりいってれば、またもっと違った話になっていたところなんですけどね(笑)。


それから、再現シーンのようなことを考えていたのを、全部それを捨てていったわけですね。
宮古島に帰ってお母さんと会うシーン。お母さんが馬に乗って港まで来るわけですよ。そこで5年ぶりにお母さんと対面する、はじめはそれをラストシーンとして考えていたんです。ひじょうに感動的な親子の出会いだったんですけどね、それも結果消えていきましたね。

いい話だなというのは、随分消えています。“ふじ学徒隊余話”と残せたらいいですね。
映画というのは、いかに省略するかっていうところがね、ポイントなんですよ。だから、うまく、だんだん、だんだん省略して残っていくんです。
――年齢にかかわらず見てほしいですが、監督ご自身はどのような人に観てほしいですか。
野村:それはやはり、彼女たちが学徒だったころと同じ、中学生、高校生に観てもらいたいという気持ちはありますね。その人たちが観ることによって残っていく話ですからね。
インタビューや撮影は大変でしたが、彼女たちはものすごい元気でした(笑)。我々より元気です。すごいです。撮影あるでしょ、集まるたびに喜んで、カラオケされていたり、女子会のようでしたよ。女学生が話しているような感じでした。自分たちも元気をもらいました。

彼女たちがすばらしいのは、亡くなった3人も一緒に生きている感じなんですよ。話の中にみんな生きています。
戦後、廃校になったが彼女たちも映画を見て、いまはこの「この映画が自分たちの後輩だ」と言ってくれました。


沖縄に関わったきっかけは「イザイホウ」
――野村監督は、石川県出身と伺いましたが、いまは沖縄にお住まいですか。
野村:はい、そうです。
行ったり来たりしていましたが、だんだん比重がこちらにかかってきて、いまはこっちにいますよ。
最初は東京で映画の仕事をしてたんですけどね、こちらで映画を撮るために来て、そのうち行ったり来たりして、向こうで撮ったりこっちで撮ったりしながら、だんだんこっちに落ち着きましたね。
――最初は『イザイホウ』ですか?
野村:はい。あれは復帰前ですね。
――最初から『イザイホウ』を撮ると決めて行ったっていうよりは、行ったときにそれを残そうとされたんですか。
野村:その前年に一度行きました。話を聞いてこれはおもしろそうだなということで、翌年来たわけですよ。そのときは3か月ぐらい久高島におりましてね。あれは楽しい撮影でしたね。あんな楽しい撮影はいままでないですよ。
――『イザイホウ』は40年間一般に公開されることがなかったんですね。
野村:最初はね、公開しなかったんですよ。カミンチュたちがあまりおおっぴらにしたくないという意向があったので。我々も、どこかからお金をもらってつくったわけじゃなくて、自分たちでつくったわけだから、寝かしたっていっこうにかまわないんですね。そしたら40年ぐらい寝てしまった(笑)。上映を始めたのは7年前くらいですかね。
イザイホウは、なくなりましてね。カミンチュも亡くなってきて、いまやらないと消えてしまうんじゃないかというようなこともあって、上映を始めたんです。
――“いまこの時機に”といういう意味では『ふじ学徒隊』といっしょですね。
野村:そうなんです。「イザイホウ」は女性のまつり、「ふじ学徒隊」も女性の話ですからね、通じるものがありますね。
やはり男性よりは、女性の方が魅力がありますよ。深みを感じるというかね。

沖縄で残したいもの
――次の作品は決まっているんですか。
野村:いろいろ話してますけど、まだ決まっていません。
――やはり女性の話でしょうか。
野村:いや(笑)、わかりません。
――沖縄に残しておきたいもの、映像で記録したいものはありますか。
野村:いろいろあるでしょうけどね、そうたくさんはできないから。沖縄のまつりとかね、そういうのは割合撮ってるんですよ。あとは、たとえば民芸というか、織物、焼き物、塗り物、ああいうものはけっこう撮っています。

沖縄は本当に素材が多いですよ。これだけのところはないですよ。たいへんなものです。

――期待しております。ありがとうございました!

 

 

 

【野村岳也監督紹介】
イザイホウ(1966)
海の祭典(1976)
ウリミバエ根絶の記録(1978)
米-みのりへの道(1985)
浦添ようどれ よみがえる古琉球(2010)
ふじ学徒隊(2012)

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