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2013年02月28日

【連載/沖縄エンタんちゅ】野村岳也(映画監督)<前編>

太平洋戦争末期の沖縄戦で負傷兵の看護に動員された、積徳高等女学校の女子学徒たちの戦争体験を記録したドキュメンタリー映画『ふじ学徒隊』。昨年、「映文連アワード2012」(主催・公益社団法人映像文化製作者連盟)で、最優秀作品賞に次ぐ文部科学大臣賞を受賞した。その製作秘話などを、野村岳也監督にうかがった。

 


積徳女学校の人たちの67年にわたる時間への敬意のあらわれ
――映文連アワード2012・文部科学大臣賞受賞おめでとうございます。 『浦添ようどれ~よみがえる古琉球』(映文連アワード2010・優秀企画賞)に続いての受賞ですね。
野村:ありがとうございます。我々がもらったというよりも、学徒隊の人たちを中心とした積徳女学校の人たちの67年にわたる時間に対する敬意のあらわれだと受け取っています。我々はそれを手伝っただけなんです。

老境にさしかかった女性の回想がテーマ
――ふじ学徒隊を、映画化したいと考えられたきっかけを教えてください。
野村:“老境に入った女の人が青春を回想する”テーマで、最初は映画の基本形として考えていたんです。それで話を聞いたり見たりしているうちに、ふじ学徒隊の人たちの話を知りました。女性の回想の話になりますので、我々が最初考えていたものとぴったり合ってきたわけです。
――おばあさまたちの青春の回想が最初のテーマだったんですね。
野村:そうそうそう。それは沖縄と限らずね。年をとった本土のかたでもそうですね。青春を回想するという、これが映画としてある意味基本形だと思っていたわけです。テーマとしては、やはり女性の回想は、最高のテーマなんです。

女性は鬼にもなれるし、神にもなれる
――それは、ドキュメンタリーという形でしょうか。
野村:ドキュメンタリーでなくても同じです。“能”でも、そういうのがありますよね。
男性より女性の方が、年をとると“深み”がありますよ。女性は、とてもやさしい、美しい女性がいると同時にね、鬼ババのような人もいるわけですよ。男は鬼にはなれないですよ。そういう意味では、女性は鬼にもなれるし、神にもなれるみたいな幅がある。


そういう人たちの青春というのは美しいですからね。その変化相当な落差があるでしょ。そこが人間的な魅力になってね。我々としては女性の方が魅力を感じますよ。それがまず根本にあって、学徒隊に触れてきたわけですよね。

観た人たちによってできる、いくつもの「ふじ学徒隊」
野村:学徒隊の方は、回想する青春が戦場だったわけですね。それは彼女たちとっては不幸だった。

我々は最初は別に目的があってつくったわけではないんですよ。戦争反対とかね、沖縄戦を記録しておこうとつくったわけではない。調べてゆくうちに学徒隊にいきわたったわけなんです。それで、テーマもなければ、目的もなしに入っているんです。

テーマや目的ができてくるのは、撮影段階ですね。目的もそこでできてくる。というような、かなり恣意的な作品ですよ、そういう意味では。


我々の作品はできあがってきてあまりわかりいい作品ではないと思いますよ。丁寧によくわかるようにはつくっていないんですよね。というのは、みえるところだけ描いているんです。
間の深いところにあるものは描いていないんです。こっちとこっちを描いて、途中は観る人のイマジネーションにゆだねるというやりかたなんです。そういうことでね、その人によって何とでも受け取れるわけです。

そういう意味では「ふじ学徒隊」というのは、観た人によって、それぞれの「ふじ学徒隊」ができるんだろうと思うんです。そういういくつも、何十本、何百本もの「ふじ学徒隊」ができてね、それによってそれが多く出まわれば、平和というものにも触れて、近くになるようなことになるかもしれないと思いますね。

“舌足らず”につくった作品
――『ふじ学徒隊』は、あえて演出し過ぎないドキュメンタリーですね。淡々と映し出しているのが印象に残りました。なのでだからこそ胸を突かれました。
野村:それは氷山方式って言うんです。頭が出ているところだけ描くんですよ。海の中に潜っている肝心なところは描いていない。

そのときだけじゃなくて、例えば、彼女たちが16歳、いま80歳代、その67年間、その一番訴えたいところ、戦後の現在にいたる67年間の軌跡は、非常に感動的な話があるわけだけれど、それには触れていないんですよ。肝心なものには触れていないんです、この作品は。
――つくりこんだものじゃないからこそ、かえって映画を観ると同時に、本当に彼女たちの人生を生で聞いたような、受けとめ方をしてしまう人もいます。
野村:そういうふうに受けとめられたら、ありがたいです。

もう少しなかに入って描いていけば、かなりわかりやすく流麗な感動的な作品にできるかもしれない。だけどね、それはフィクションになっちゃうんですよ。こういう作品の場合は、フィクションになっちゃまずいんですね。ですから、この作品は“わかりにくいままにわかってもらわないといけない”という、宿命があるんです。
――そういうドキュメンタリーのつくり方をされている上で、今回受賞されましたね。
野村:ぼくもわかってもらえた、ある程度ひびいたところがあったんだと思って、ありがたいなと思いました。

それはやっぱり彼女たちの67年に対する敬意のあらわれだと感じています。

――あえて淡々と映し出すドキュメンタリーが認められる気運がありますね。
野村:この作品は“舌足らず”にできているんですよ。ぼくはこういう映画は舌足らずのほうがいいと思う。描きこむとね、それは、とてもそのとき目立って気持ちよく観られるし、つくった方も気持ちよく観せられるけれども、それではやっぱり本物は届かないんじゃないかなって気がするんですね。

 

 

――【連載/沖縄エンタんちゅ】野村岳也(映画監督)<後編> につづく―― 

【野村岳也監督紹介】
イザイホウ(1966)
海の祭典(1976)
ウリミバエ根絶の記録(1978)
米-みのりへの道(1985)
浦添ようどれ よみがえる古琉球(2010)
ふじ学徒隊(2012)

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